会社が倒産して無職になったブルベアトレーダーの日常

元配送ドライバー業でしたがコロナで会社が倒産しクビになり、時間だけはあるので株のブルベアだけでなんとか食ってます

【異世界冒険ラノベ風1】下級冒険者(非正規社員)がパワハラ魔王に挑んで玉砕するという話-1

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私がパート社員(非正規社員・週40時間勤務)で勤務するプラス(仮)なのですが、とある夏の日の1ヶ月間もの間、クレームアフター専門のコールセンターを体験して来ました。

 

電話を取ったらいきなり何か大声で叫び出す人、名前も言わずに「これから行くから●●という商品を取っといてくれ」と電話を切ってしまう人、組立商品を組み立てできないからちょっと来いという人など、さまざまな電話がかかってくる中、『最大の敵は身内にあり』を身をもって経験して来ました。


異世界に転生しませんけど、ラノベ風にしてみました(笑)。

※タイトル変更しました。

 

アルバイトごときがちょっとした不毛なパワハラ上司に挑むというノンフィクションです!

 

 


俺の名前は田中、日本という異世界に転生して52年になる……最近ちょっと厨二病を患ってはいるが、年齢の割には元気な方だと思う。


訳あって20年勤めて来た上級冒険者生活(会社員生活)にピリオドを打ち、現在はホームセンター系のプラス(仮)ABC店のバックヤード担当の下級冒険者非正規社員として働いている。


自分で言うのも小っ恥ずかしい話だが、他人からは若く見られることが多く、得することもあれば、損することもよくある。やはり人は見かけと年齢が合っている方が自然で良いと思う今日この頃だ。


ある夏の日、俺は冒険(仕事)の区切りをつけて昼休憩をとることにした。

 

おっさん冒険者としては休憩は重要な任務と言える……1日は長いからな。

 

ギルドマスター室(オペレーションルーム)にてタイムカードを切り、昼食を取る前に向かうのは喫煙所だ。

 

まあ、いまどき批判あろうかと思うけど、俺は喫煙者なので、昼食を食べる前に一服するのが日課だ。

 

喫煙所の魔法陣(扉)をくぐり抜けると先客がいた……ギルドマスター(店長)だ。

 

店長もバリバリのヘビースモーカーなので、喫煙者であっても気分的に楽だ。

 

俺(田中)「お疲れっす!」

 

店長「あ〜、お疲れでーす」

 

冒険者(従業員)同士の挨拶なんてこんなもんだ。

 

そして、タバコを吸い終わろうとしていた店長から声をかけられた。


店長「田中さん、申し訳ないけど迷宮ダンジョン(本社店舗コールセンター)に1ヵ月だけ潜ってもらえないですかねぇ?」


えっ、なにそれ?

 

ソロで? それとも誰かとパーティを組むのか?

 

店長は続けて新しいタバコに火をつけた。


店長の話によると人事の都合や退職などの都合により、一時的に本社店舗コールセンターの人員が不足していて、なんとか他部署の正社員でカバーしている状態らしい。


そこで本社に近い近隣店舗から正社員、もしくはパート社員を期間限定(だいたい1ヵ月交代)でコールセンター業務をやってもらうということになったようだ。


俺(田中)「え〜〜〜〜〜!私が行くんですかぁ?」


コールセンターのある本社までは、馬車(電車)&徒歩で片道1時間弱ほどかかる。


俺はプラス(仮)ABC店から自宅まで徒歩5分と近所だから通っているというのに、1ヵ月間もの間、電車+徒歩で往復2時間の本社店舗に通勤なんてとんでもないことだと思った。


店長「交通費は全額支給しますから」


ったりめーだろ!

 

まず交通費が自腹だったら話など聞くまでもなく返事はNOだ!


しかし当然のように通勤中の時給は発生しないので、誰が考えても大損であることには違いない。

 

さらにこのような問題もある。


実は本社というのは店舗も兼ねている都心の大型店舗だ。


ウチのABC店のような『地方の中型店舗』とは根本的に時給が約100円も違うのだ!


時給が100円も違えば1日8時間勤務だと800円、1ヶ月22日勤務だとすると17,600円という差がある。

 

17,600円の差は大きいだろ!

 

しかし俺がもらえる時給は所属しているABC店の時給……つまり低賃金のまま、他所の店舗で働け……ということだ。


もちろん断わるつもりだった。


俺になんのメリットもなく、デメリットだらけであるから行く必要性は皆無だ。


店長「もちろん次回の契約更新で、評価査定を最高ランクにします……このぐらいのメリットしか田中さんにしてやれないんですよね」


ま、まあ、仕方がない……誰かがABC店から本社へ行かねばならないことは決定しているのだから。


俺なりに何か得るものでもあれば儲けもの、ぐらいに考えて承諾した……け、けっして評価査定に釣られた訳ではない……とだけは言っておこう。


俺の本社店舗コールセンターでの主な業務は『専用荷馬車(社用車:軽バン)の運転』とのこと。


商品に不具合があった場合に社用車に商品を積んで交換しに行ったり、場合によっては修理やクレーム対応もしなくてはならない。商品の交換ぐらいだったら1人で行くこともあるらしいが、基本的には2人で外出することになっているという話だった。


本社コールセンターに行く前のABC店最後の勤務時に、店長から気になる一言があった。


店長「田中さん、もしなにか嫌なことがあったら私に連絡してください。無理してまで本社コールセンターに行く必要はないですから」


どういう意味なのだろうか……ヤバイ魔物でも生息しているのだろうか?

 

謎は深まるばかりだが、俺はあえて何も訊かなかった。

 

   *     *     *

 

そして迷宮ダンジョン(本社店舗コールセンター)へと潜る(勤務する)初日を迎えた。


通勤馬車(電車)に乗るのは久しぶりだったが、AM9:20ごろの電車だったので、比較的空いていたのはラッキーだ。

 

しかし本社までは最寄りの駅から徒歩10分という距離を歩かなくてはならず、慣れない通勤せいか朝から若干疲れ気味だ。

 

それでもABC店を代表して来ているのだから、元気に1ヶ月間頑張ろうと俺は考えていた。


まずは開店前の朝礼で、店舗従業員たち20名ぐらいに紹介された。


紹介されたのはいいが、大型店なのでバイトやパートの人数がABC店に比べると2倍以上の人員がいる……いまこの朝礼に参加しているのは「ほんのごく一部の人」だけだ。


紹介があっても俺の名前を覚える者はほとんどいないだろう。

 

せいぜい「コールセンターにABC店の人が来ている」ぐらいの認識のはずだ……皆んなパート社員だからな。


俺自身も名前や顔を覚えて欲しいとは思っていない……特に俺のユニークスキル(組立・修理)は絶対に知られてはならない……余計な仕事が増えるだけだからな。

 

どうせ1ヶ月、さらに有給休暇を取得しているので18日間しか勤務しないのだから、早く時間が過ぎてくれればそれでいい。


朝礼が終わると俺は店舗内の売場外にあるコールセンターという札がかかっている部屋へと案内された。


室内には机と椅子が10個ぐらいならんでおり、部屋の広さは10畳ぐらいで、正社員と俺を含むパートで7人だった。


皆んな基本的に名札をつけているので、名前はわかるが1人だけ妙に目立つ奴がいる……奴が魔王なのか?


典型的な小太りのおっさんで背は俺よりも低く160cmちょっとぐらい、体重は70kgを超えているだろう。


なぜ1人だけ目立つのか……短髪で目が細く鋭い顔つき、そして関西弁をしゃべくりまくっていたからだ……関西の方には大変失礼かとは思うが、どう見ても魔王(ヤ●ザ)にしか見えなかった。


そのおっさんの名前は『鏑木(仮名)』という。


あとでわかったことだが、2年前にプラス(仮)に中途入社した正社員で年齢は43歳、以前は某ドラッグストアでエリアマネージャーをやっていたそうだ。


で、この鏑木という奴が1ヶ月の間、基本的に俺の上司になるらしい。


俺「ABC店から参りました田中と申します。1ヶ月間という短い期間ですが、よろしくお願いします」


挨拶は大切だと思う……今日から一緒にパーティを組むんだからな。

 

俺は相手からも挨拶の言葉が返ってくるものだと思って待っていた。


鏑木は椅子に座ったままで、俺を見上げるような姿勢で口を開いた。


鏑木「あんね、この仕事はお客さんのところに行くことが多いから、ちゃんとした格好をしないとあかんでしょ。ネクタイ締めるのは常識でしょ?」


彼の開口一番の言葉は挨拶ではなく、俺の服装に対する注意だった。


俺の服装は、通常店舗で勤務するときに着ている指定冒険者服(ユニフォーム)で、ABC店の店長からは服装はユニフォームで良いと言われていた。


俺「……ABC店の店長から『服装はユニフォームで良い』と言われてますけど」


俺は本社店舗コールセンターに来る前に店長に確認しておいた……だから間違っていないはずだ。仮にもし間違っていたとしても店長から許可を得ているのだから、俺が注意される覚えはない。ABC店に電話でもして店長に文句を言えばいいだろうと思う。


それでも鏑木は食い下がってきやがった。


鏑木「いやだってお客さんのところへ行くのに失礼でしょ?」


その一言で俺は少々カチンときた。

 

なぜ俺が文句を言われなくてはならないのか?


俺「どうしてもユニフォームはダメというなら、なぜ前もって指示をしなかったのですか? あとはウチの店長とでも話をつけてください」


そう言うと鏑木は俺に何も言わずに席を立ち、入口ドア付近に座っていた本社店舗の魔王(店長)のもとへ向かった。


鏑木「店長、あの人ユニフォームですけど、あの格好で外出させてもいいんですか?」


本社店舗の店長「うん、別にいいよー!」

 

俺は彼らの話を聞いていないように装った。


店長からそのように言われ、再び席に戻ってきた鏑木は『まるで何事もなかったかのように』今日の外出スケジュールについて語り出した。


俺「(別に謝って欲しい訳ではないが)あの〜、服装の件は?」


立ったままの俺を横目でちらっと見ながらあからさまに嫌そうな顔をした。


鏑木「(チッ)あー、別にいいっすわ。そんでね、今日は11時に外出の予定が……」


なんなんだコイツはっ!


俺はプラス(仮)で数年働いているが、このような『感じの悪い冒険者(正社員)」は初めてだ。


俺の勤務しているABC店は新規オープンだったこともあり、研修やオープンセール関連で数多くの正社員たちに接してきたが、皆んな親切で丁寧な方ばかりだった。もちろん中には中途採用者などもいたが、敬語も使わずに態度が悪い正社員など一人もいなかった。


そんな時、俺はABC店の店長の最後の言葉を思い出した。


田中さん、もしなにか嫌なことがあったら私に連絡してください。無理してまで本社コールセンターに行く必要はないですから


嫌なこと』って、鏑木という名の冒険者(正社員)のことだったのかぁ〜!!!


あとの祭りである。


つづく。