アルバイトごときがちょっとした不毛なパワハラ上司に挑むというノンフィクションです!
前号からの続きで、Part3になります。
できれば先にこちらをお読みいただいた方が話がつながります。
先に言っておきますが、若干読みにくいかも〜です!
まず始めに俺が懸念していた素朴な疑問が解明された。
いま現在向かっている場所は片道30kmと、ちょっと距離があり遠い。
順調に行けば約2時間ぐらいで往復できるが、万が一ということもありうる。
万が一渋滞などにハマってしまったり、先方で何かしらのトラブルがあった場合は時間が押してしまうなど、2件目が間に合わなくなる可能性が少しだけあるというのだ。
なるほど、ちゃんと考えているじゃねーか。
でもそれって当初俺が聞いていた話の『社用車の運転手』ではなく、アフターフォローまでしなくてはならないということなのかな?
当初の俺の感覚では『宅配便』だった。
指定された時間にお客様宅へ向かい、商品を交換して戻ってくる……ということの繰り返しぐらいに考えていた……はぁ〜、気が重い。
そんな俺の気苦労をガン無視して、鏑木のマシンガントークは止まらなかった。
鏑木「そう言えば田中さんて、いくつなん?」
発音が完全に関西弁である。
俺自身には関西出身の友人がいて、同じような感じの発音で話すが、友人の話し方は全然嫌じゃない……しかし鏑木(仮名)の話し方はどうも苦手だ。
俺「52歳ですよ、今年で53歳になります」
まあ、この程度のことは普通に答えることにしている。
まさか「いくつに見えますかぁ〜?」というような小ボケは期待してないよな。
鏑木「えっ、そうですかぁ。若く見えますねぇ、年下かと思ってましたわぁ」
確かに40歳前後に見られることが多いので、大抵の人は俺の年齢を知ると似たようなリアクションをする……ちなみに髪の毛は白髪染めしているので真っ黒だ。
俺の実年齢を知った鏑木の態度は基本的に変わらなかったが、若干言葉遣いが敬語に近づいたような気がする。
* * *
ほとんどの鏑木のトークは忘れてしまっているが、ギリで覚えているものをいくつか紹介しておこう。
※すべての話が真実かどうかの確証はありません。
1 僕は偉かったんだゾォ〜!
鏑木はプラス(仮)に転職する前は、某大手薬師堂ギルド(ドラッグストア)のエリアマネージャーだったらしい。
店舗の店長をやっていた頃は、月間売り上げが何度も地区ナンバーワンになり、2年後にエリアマネジャーへと昇格、本人曰く「異例の超スピード出世」だそうだ。
エリマネ昇格後も、自分の指導で各店舗の売上を飛躍的に向上させ、エリマネとして在籍していた間は常に右肩上がりだったようだ。
というような話を聞いてしまうとやはり疑問が思い浮かんでしまう。
『なぜエリマネという立場を捨ててまでプラス(仮)に転職したのか?』
店長として業績を伸ばし、エリマネとしても大活躍したんだったら、近い将来はゼネラルマネジャー等へ出世して、さらに取締役などの役職を得ることも可能だったはず……給与面だけで考えても年収1千万以上であろうよ。
俺「なんでそこまで活躍されたのに辞めちゃったんですか?」
鏑木「・・・・・。」
一瞬間が空いた……しかし鏑木は普通に語り始めた。
鏑木「○△□会社と合併しちゃったんですよ。そしたらね、ウチの上が皆んな変わっちゃって相手の会社で固まったんスよ……。方針変更言うんかなぁ、やり方も全部変わって僕も商品部のバイヤーになったんですよ」
鏑木は自身のやり方で業績を上げて来たという自負があったのだろう……そのやり方を否定され根本的に変更させられたと言うのだ。
ん、待てよ? 「ウチの上が皆んな変わった」ということは『企業合併』というよりも『吸収合併』じゃないのか?
俺は経済のことはチンプンカンプンではあるが、M&Aぐらいは知っている。
どうやら鏑木のいた会社は『経営統合』により、相手の企業に『吸収合併』されたのだろう……って、アンタがエリマネになって業績が上がったんじゃなかったのか?
なんで鏑木のおかげで業績が上がった会社が、M&Aで『吸収合併』されなくちゃならんのよ。
それに本人曰くではあるけど、エリマネとしての手腕は優秀だったんでしょ?
なにか話の筋が通っていないというか、鏑木の話がどこまで本当なのかわからなくなったので、話を深く追求するのはやめにした。
とりあえず奴の話から推測するとこんな感じになるんじゃなかろうか。
会社が吸収合併されて、自社の上層部(取締役とか)に相手側の企業の人で埋め尽くされた。
新しい上層部からは企業としてさまざまな方針変更が決定し言い渡されたが、それを鏑木は不服に思ったので、辞めた……。
いや、鏑木の性格からすると黙って「はいそうですかぁ、じゃあ辞めますわ」とはならなかったと思う。
自身が築き上げた場所を勝手に荒らされたんだ、黙っていられるはずがない。
たぶん憶測ではあるが『方針変更に反逆』したんだと思う。
その結果、エリマネとしては不適格と判断され、商品部に飛ばされたのか……事実上の降格処分みたいなものであろう……そうでもなければ通常エリマネからバイヤーにはならんだろうよ(業界のことは知りませんけど)。
正社員という企業の歯車である限り、上の決定は絶対である。
とりあえず言われた通りにやっておいて、そのあとから実績を積み上げていけば良かったもののカッとしちゃったのかな?
小型荷馬車(軽バン)でのドライブ中にその某ドラッグストアがあるたびに「くそ〜、嫌いやわぁあの店」と呟いていたので煩かった。
2 とにかくマウントを取りたがる…超迷惑ッス
鏑木の話は、とにかく自慢話が多い。
もうほとんどの話は自慢話と言っても過言ではない。
本社店舗の休憩室でも女性正社員や女性パート社員たちに「僕は毎年ハワイ旅行に行くんですよ。いや〜、ハワイは楽でいいっすよぉ」と自慢している……。
ちなみに彼は基本的に女性と上司と正社員に対してだけ明るいトーンで話す。
まあ、ご機嫌取りということなのだろうな。
俺に対しては絶対にトーンをあげようとはせず、マウントを取りに来るような威圧的な話し方をする。
例えば自分の所有する車の話。
鏑木「田中さんは、車は何に乗ってますかぁ?」
俺「・・・軽自動車ですよ、近所で買い物ぐらいしか乗りませんから」
一応正直に答えてみたが、このあと俺は猛烈に後悔した。
『いや〜私は車に全く興味がないんです。自家用車は持ってません!』
と、このぐらい言っておけば良かった……。
鏑木「僕はね、国産車は絶対に乗らんのですよ。BMWかベンツしか乗らんのです」
長くなるのである程度省略させてもらうが、
「国産で500万するのがあるでしょ? あれなんて自動でエアコンの吹き出しが動いたりとか、変なところがピカピカ光ったりするだけなんすよ。国産車ってそんなんばっかですわ」
知らんがな。
国産車で500万するような乗用車に乗ったことないし、友人などに乗せてもらったことも多分ないと思う。ちなみに高級外車なら古い型ではあるがロールスロイスに乗せてもらったことがある……凄かった…乗り心地が車とは思えないほど良かったという記憶がある。
俺は車に全く詳しくないのでよく知らないが、どうやら彼が乗ってきた外車は500万ぐらいのようだ……それって高級外車って言うのだろうか?
鏑木「外車に乗るのはね、親からのそーゆー教育を受けたからなんですよ」
ほう、それはそれは! さぞお坊ちゃんなんでしょうなぁ〜。
鏑木「ウチの親はね、『車に乗るなら最高の車でなければならない』と子供の頃から言われてたんですよ」
ん?
言っている意味がよくわからないが、それが親からの教育だと信じ込んでいるなら仕方ないよな。
まあ、「最高の車」というのがBMWかベンツの500万の車で正しいかどうかは俺にはわからんけど。
鏑木「僕はね、エリマネだった頃は毎日100kmぐらいは車で移動するんですよ。そしたらね、年間3万km、新車で買って次の車検までに10万kmぐらいになっちゃうんで、それを下取りにして新車を購入するんですよ。高級車だから10万km走っててもいい金額になるんですわ!」
鏑木のお金持ちアピールの1つだ。
俺のような50歳代で、現在非正規社員として働いている者に、そのような自慢をしてどうしたいんだろうか?
『貴様よりも自分の方が上流階級である!』
ということを言いたいのかな?
まあ、それならそれで仕方ないけどちょっと面倒になって来たので、少しだけ話しの方向を変えることにした。
俺「私は車はあまり興味ないので、動けばなんでもいい方なんですけど、オートバイはちょっとうるさいですよ。もう古いバイクなんで価値はそれほどでもないですけど、『トライアンフ スピードトリプル』というイギリスのバイクに乗ってます」
たぶんトライアンフのバイクなんて、鏑木は知らないだろうな。
トライアンフ社は以前四輪車も作っていたが、バイクメーカーでもある。
確か二輪部門は独立して別会社になったんだっけ?……俺も詳細は知らん。
オートバイは現在でも新車が作られて販売されている……まあ、俺のは古いけど、一応リッターのインジェクション車だ。
鏑木「僕もね、学生時代にバイク乗ってたんですよ、カワサキのバイク。でもね、事故って廃車にしてからは車だけですわ」
ちっ、若干ミスったな……まさか二輪免許を持っていたとはな。
しかし鏑木はそれ以上オートバイの話には食いついてこなくなった。「カワサキのバイク」とだけしか言わなかったことから、もしかすると嘘かもしれないなぁ。
通常のバイク乗りだったら車種とか車名や排気量を言うはずだ。
まさか覚えていないとか知らないと言うことはあるまい。
まだ鏑木の自慢話は続くが、またの機会にお話します。
つづく。