会社が倒産して無職になったブルベアトレーダーの日常

元配送ドライバー業でしたがコロナで会社が倒産しクビになり、時間だけはあるので株のブルベアだけでなんとか食ってます

【異世界冒険ラノベ風:最終話】下級冒険者(非正規社員)がパワハラ魔王に挑んで玉砕するという話-7

f:id:the_kouri:20190311142815p:plain

アルバイトごときがちょっとした不毛なパワハラ上司に挑むというノンフィクションです!

前号からの続きで、最終話になります。

できれば先にこちらをお読みいただいた方が話がつながります。

the-kouri.hatenablog.com

 
このブログは異世界冒険ライトノベル風に記述されています。

先に言っておきますが、若干読みにくいかも〜です!

 


鏑木はとにかくしつこいぐらいに俺にフリーエージェントを要求してくる……俺、アルバイトだぜ?


前号にも記したが、飴と鞭を使い分けて、まるで俺を洗脳するかのごとく喋りまくってくる。

 

たぶん鏑木は自分のスキルであれば、俺を簡単に洗脳して、なんでも言う事を訊くようにできると確信しているのであろう。


はっきり言って、メッチャ迷惑である。


喫煙所で一緒になったAさんにそのことを話すと彼はその理由を簡単に推測してくれた。


Aさん「あ〜、それはですね、たぶん彼は焦っているんですよ。確か入社してからすでに2年も経っているのにまだ平社員のままですからね!」


Aさんのその言葉に俺はピ〜ンっときた!


プラス(仮)での中途入社の人の立場というのは、前職を活かした職種に就くことを前提として雇用されるケースがほとんどだ。


例えば経理の経験者が中途採用された場合、研修後に店舗に配属されて1年ぐらいでフロアマネージャーの資格を取得するのが一般的だ。


その後、店舗で1〜2年ぐらい役職者としての経験を積み、本社などの経理担当に異動することになり、余程のことがない限りそのまま本社で経理を続けることになる。


鏑木のケースだと前職が某ドラッグストアのエリマネだったので、やはりプラス(仮)でも同じ立場になる予定だと本人も言っていた……にも関わらず今だに平社員でコールセンター業務やカスタマーサービスを担当しているということは立場的に非常にマズい。


入社後2年なら本来フロアマネージャーもしくは副店長ぐらいになっていても別段不思議ではないぐらいだ。


確かに平社員のままでは焦りが出るのも当然だ。


Aさん「だから彼からすれば田中さんがコールセンターにず〜っといてくれたら、売場に戻れるとか考えているんじゃないですかね?」


間違いない、それだ!


鏑木は冒険者ギルド(コールセンター)の人数不足が理由で、『売場に戻れない→役職者になれない』と考えている可能性が高い……馬鹿だな……売場に戻れない理由は自分の行いが悪かったということに気づいていないのだろう。


俺はプラス(仮)という会社の立場で物事を考えてみた。


入社前の鏑木の印象を面接など担当した人事部からすれば、「前職が某ドラッグストアのエリマネ!?やったぁ〜、良い人材が来てくれた、よし採用しよう!!」となったはずだ。


しかし実際に店舗に配属させてみたら、トンデモない奴だと判明した。


トンデモない奴でもそう簡単にクビを切ることなどできない……そりゃそうだ、プラス(仮)は大手企業だし、なにより採用を決断した人事部が能無しということになってしまう。


そして鏑木本人からの情報ではあるが、将来的に『エリマネになってもらう』というような契約で入社しているらしいので、配送センターや倉庫管理などに飛ばすことも難しい。

※このような契約が本当にあるのかどうか確証はありません。


そこで冒険者ギルド(コールセンター)という業務を長くやらせて、あわよくば「辞めてくんねーかなぁ」というような希望的観測を決め込んだのかもしれない。


だが、鏑木はけっして諦めてはいない。


自分が間違ったことなど1度もないと思い込んでいるのだから。


今後も自分が間違うことなどあるはずはないし、世の中自分の考えた通りに進んでいくはずだ……ぐらいに思っているのだろう。


だから俺がこの迷宮ダンジョン(本社店舗)冒険(仕事)を続けるよう、彼は俺に『洗脳魔法攻撃』を繰り返すのであろうな。


ま、相当面倒だけど無視し続けるしかないよな……そして期限が過ぎればABC店に戻るだけだ!


そして俺の冒険の日々は最終日を迎えることになった。


最終日は運の良いことに鏑木が休みだった。

 

奴に挨拶をしなくてもOKというのはラッキーだな!


俺は迷宮ダンジョン(本社店舗)でミス一つなく終えたわけではない……特殊な業務だからな、それなりにミスをやらかしていた。


魔王(本社店舗の店長)をはじめ、最終日当時にいた全員にお礼をお詫びの挨拶をした。


その他には喫煙所会談で仲良くなった方々にも挨拶をし、最終日を無事に乗り切った。


   *     *     *


翌日から俺は自宅から徒歩5分の場所にあるABC店に復帰した。


真夏の太陽が眩しいぜ!


久しぶりに従業員専用ドアを開けようとしたら、暗証番号が変更されていて1度目はエラー表示になってしまった。


店内には誰かしらいるだろうからインターフォンを鳴らして開けてもらうことも可能だったが、「たぶん変更した暗証番号はコレだろ!」という番号を入力した。


──────かちゃり──────


解錠された!


さすが俺!!


どこかのダンジョンでシーフ役ができるかもしれないな。


店舗で俺を見かけた従業員たちが「久しぶり〜」とか「お帰り〜」などと歓迎してくれた……涙が出そうになった。


そう……俺は無事に冒険を終え、生きてこの地に帰ってきたのだ!


着替えを済ませ、早速業務に就くが1ヶ月もの間留守にしていただけのことはあった……状況が何もわからん!


せめて前日の人が書き置きでもしておいてくれれば良いのに……。


仕方がないので自分で全部調べ、仕事を一つ一つ丁寧にこなしていく。

 

お世辞にも整理されているとは言えないバックヤードの片付けも行なった。

 

俺「ふぅ〜、こんなもんかな!」


しかし、いまの俺は幸せに満ち溢れていた。


もう2度と鏑木の面を見なくて済むのが、こんなにも幸せだなんて思いよらなかった。


──────数日後──────


とある日、俺が『お客様持ち帰り商品の梱包』をしているときに内線電話の音が鳴り響いた。

 

『お客様持ち帰り商品の梱包』というのは、B級商品などの展示販売品を購入された場合など、すでに箱とか何もないので、お客様が持ち帰りの際に傷がつかないようにウレタンシートやラップなどで梱包するという仕事だ。


もちろんお客様は料金の支払いなどを済ませ、俺の梱包待ちとなっている。


そんな忙しいときに内線がかかってきたのだが、電話に出ないワケにはいかない。


俺「はい、田中でーす!」


学生バイト「あ、田中さんですか? いまコールセンターの人が来ていて荷物を受け取ってほしいって言ってるんですけど……」


俺「あ〜、聞いてますよ。それ受け取っておくだけでいいから!」


そう、朝一でCさんというコールセンターで世話になった人から電話連絡があり、「引き取り商品を持っていくからお願いしますね!」と言われていた。


学生バイト「それがですね、田中さんを呼んでくれって言ってるんですよ」


俺「はぁ? いま持ち帰り梱包やっているから、あと15分以上かかるよ?」


学生バイト「はい……、それでも待っているから来てくれって言ってます」


背中に悪寒が走った……まさか……?


20分後、お客様に梱包した商品を無事に渡し、1階の倉庫に向かった。


倉庫のシャッターが全開になっており、エアコンが効いて涼しいはずの倉庫は灼熱と化していた。


────どぉ〜〜〜ん────


搬入口には知った顔が2人いた。


1人はコールセンター業務の伝票入力などを指導してくれたりと世話になったCさんという方……そしてもう1人は奴だ……鏑木だ


俺は動揺を悟られないように奴らに近づいた。


俺「お疲れ様です。これがこっちで処理する引き上げ商品ですか?」


Cさん「はい、たいした傷じゃないので、このままB級販売品として売っちゃってください!」


Cさんは明るい感じで、頼りになる人だ……この人は、まぁいいんですよ。


問題は鏑木だ。


鏑木「あのね田中さん。こうやってね、ABC店の面倒をこっちがみてやってんだよ!」


相変わらず挨拶も何もなく、なんか鏑木がイキってる?


鏑木「ABC店だけ人員も出さずに……おかしいと思いません?」


俺は呆れ返っていた。


もう馬鹿には何を言っても無駄だとも思った。


しかし同じ企業の店舗グループとはいえ、もう俺はこいつの直接の部下ではない……。


鏑木「あなたがこっちに来るのが当然でしょ!!」


またしても洗脳魔法攻撃を仕掛けてくる鏑木であったが、その横にいるCさんはバツの悪そうな顔をしていた。


なるほど、Cさんを当て馬にしたのね。


俺は考えた……う〜ん、ちょっと強めに言ったほうがいいかなぁ〜?


強めで言うことにした。


俺「あのね、前から何度も言っているけど、そんなことを俺が決められるワケがないでしょ? 俺、バイトだよ?」


鏑木もエスカレートしてきた。


鏑木「あなたが異動してウチに通えば済むことでしょう!」


やっぱりこいつは馬鹿だと再度確信した。


俺「……今日は店長が休みでいないけど、副店長がいます。そいうことはABC店の役職者と話をつけてくださいよ、今すぐ無線でここに呼び出しましょうか?」


もちろん鏑木はウンとは言わない……なぜなら副店長という立場の人間よりも自分の方が現状では下位だからだ。


さらにこのような行動は間違いなく鏑木の独断で行われてる……魔王(本社店舗の店長)からの指示のはずがない。


なぜなら『従業員の店舗間勧誘は基本的に会社のルールとして禁止されている』からである。


ほぼ同じ金額の時給を支払う立場であれば、優秀なバイトの方がいいに決まっている。そうなると近場の店舗にいる優秀なバイトをスカウトするという手口が横行するのは必然だ。


例えば「ウチの店に異動してくれたら、常に最高評価にしてあげるから!」などということになりかねない。


そのためプラス(仮)では、『他店舗のパート・バイトを引抜くことは禁止』しているのだ(普通のことです)!


鏑木「……じゃあいいですわ」


鏑木としては下っ端の俺には強い態度で出ることができるが、役職者には強く出れないし、もし仮に話をしたとしても正論で返されるだけということを理解しているのだろう。


だが、俺の不安は拭いようがない。


また何かにつけ俺に接触してくる可能性がある……潰しておくか?


俺「一応、今のことは店長と副店長に報告しておきますね……まず、時間のことね。このような無駄話に15分という長時間、無理やり引き止められましたからね〜!こっちだって暇じゃないんですからね。それと店舗間勧誘は確かルール違反のはずですから、これもキチンと報告しておきますね!!」


俺はワザと明るい口調で冗談のように語りかけた。


鏑木「・・・・・・」


鏑木は言葉がないようだったが、その横でCさんは苦笑いして、右手を少し上にあげて合図をしてきた。


たぶんCさんは「それでOKでーす!」とでも言いたかったのだろう……Cさんだって暇じゃないはずだし、こんなことに付き合わされて可哀想だな。


たぶん帰りの車の中で、鏑木のボヤキや嫌味を散々聞かされるんだろうなぁ……Cさん、ガンバ!


こうして俺の夏は本当に終わりを告げた。


まさかABC店まで押し掛けてくるとは思ってもみなかったが、本当に鏑木という男はしょーもない奴であった


もちろん俺はすぐさま副店長に事の顛末を報告した。


できることなら冒険者ギルド(コールセンター)に苦情を言ってほしいぐらいだが、たぶんそれだけは無理であろう。


なぜなら近い将来、鏑木がABC店の店長や副店長の上司、つまりエリマネとして上の立場になる可能性があるからである。


企業の歯車である正社員たちは、常に先のことを考えている。


ここで鏑木を貶めるようなことをしても自分には何のメリットもなく、巨大なデメリットだけが発生するかもしれないのだ。


まぁ会話を録音していたワケじゃないから証拠はない……あるのは『15分ほど搬入口で立ち話をしていた防犯カメラの映像』だけだ!


正直なところ俺自身も鏑木がクビになればいい……などとは考えていない。


彼には彼の考え方や生活があるだろうよ……別に興味は全くないが。


もちろん俺には俺の考え方や生活がある。


要するに2度と俺に関わらないでくれさえすればいい。


これで本当に俺の冒険者生活は完結した……かに思えたが現実というのは酷なものであった。


   *     *     *


翌年の春、ABC店の従業員休憩所にある掲示板に数枚の紙が張り出された。


その紙は『正社員人事異動』と書かれたもので、ページをめくると……


●月●日:鏑木●●

本社店舗よりABC店に異動

役 職:フロアマネージャー


悪夢への扉が開かれた。


終わり。

 

*     *     * 


ちょっと長くなってしまいましたが、なんとか書き終えることができました。


なお、いまのところ『鏑木、ABC店編』の執筆予定はありません!


だって、もう話がテンコ盛り過ぎて、時系列を含めて話をまとめるのが大変なんですもん(笑)!


まぁ9割ぐらいのABC店従業員から迷惑がられて、1年ぐらいでどこかの地方に飛ばされたようです……とだけ報告しておきます!

 

奴がどこでどうなろうと私には関係ないですから!!


ありがとうございました。